日本代表を輩出した名門校に、新鋭が牙を剥く。第100回全国高校サッカー選手権の組み合わせ抽選会が、11月15日に開催。初出場となる長野県代表・市立長野は、初戦で京都府代表・東山との対戦が決まった。
抽選会は昨年に引き続き、新型コロナウイルスの感染予防の観点からオンラインで行われた。各都道府県予選を勝ち抜いた46校(代表校が未定の群馬県と茨城県を除く)の監督と主将が、画面越しに出席。予備抽選の末、市立長野の抽選順は最後となった。「(対戦校が決まるまで)本当に長かった」と芦田徹監督が本音を漏らすと、尾崎裕人主将も「自分がくじを引く前に決まってしまった」と苦笑。それでも指揮官は「初めてだったので良い経験になった」と目を輝かせる。
チームは6日に県大会を制し、その9日後に全国大会の組み合わせが決定。芦田監督は「対戦相手が決まったことで、やっと前に進める」と顔を上げた。今後は相手の分析を重ねながら、自分たちのサッカーを“全国仕様”に仕上げていく。
初戦で戦う東山は、日本代表の鎌田大地(フランクフルト=ドイツ)をはじめ、松本山雅とAC長野パルセイロでプレーした岡佳樹(ヴァンラーレ八戸)らを輩出した名門校だ。2018年には全国総体でベスト4に進出。今年の総体でも初戦で前橋育英(群馬)を下すと、ベスト8まで駒を進めた。一方、選手権では目立った成績を残せていない。今回で4度目の出場となるが、過去の大会はいずれも初戦敗退に終わっている。
夏の総体では17人中、実に11人が2年生で、優秀選手に選ばれた阪田澪哉もその一人だ。宇治FC出身の彼をはじめ、ガンバ大阪やセレッソ大阪など、関西のクラブチームから選手が集っている。個のレベルでは差があるかもしれないが、尾崎は「そういう相手と戦う機会はなかなかないので、選手権という舞台で自分の力を試したい。チームとしても、いかにパスサッカーで勝利できるかが楽しみ」と意気込む。
長野県代表としては、奇しくも2大会連続で京都府代表との対戦となった。前回大会では、松本国際が京都橘に0-6と大敗。芦田監督は「その部分も背負うつもりでいる」とリベンジを誓う。また、チームとしては2016年と2017年の総体以来、3度目の全国の舞台だ。過去の経験も踏まえ「県大会とは次元の違う選手たちと真剣勝負をしなければいけない。それを選手にも伝えながら、自分たちの強みを出せるように準備していきたい」と気を引き締める。
記念すべき第100回大会での初出場に、尾崎は「自分が入学した時に、第100回大会の代ということを知った。絶対に出場したいと思っていたので嬉しい」と微笑む。その喜びを増幅するためにも、まずは大晦日の初戦を突破したい。残された時間は約1か月半。ダークホースとなるための準備が始まった。
取材・撮影/田中紘夢