取材日:11月29日
力の差を見せつけられながらも、下を向くことはなかった。 県総体を最後に3年生は引退し、世代交代して臨んだ10月。選手権県予選4回戦で優勝校の松本国際と対戦した伊那北は、0-10と大差をつけられながらもボールを追い続けた。「強豪校はフィジカルや判断力が全然違う」と語るキャプテンの廣瀬蒼は、「何としても1点返そう」と背中で仲間を鼓舞しつづけた。
「何点やられても、自分たちがやろうとすることをやっていく」と登内将志監督。「歴然とした差はあったが、『ここまで違うんだ』と選手たちが経験できた。10点取られていてもやることをやって、『どこまで通用するか』を知ることが大切」。就任10年目となる指揮官はうなずき、副部長を務める星野樹も「自分たちのレベルを知れた良い機会」と口をそろえた。
粘り強さを持ち味に、最後までうつむかない姿勢をつらぬいてきた。5月の南信総体で勝ち上がったのも、先輩たちの粘りの姿勢で勝利を積み上げたもの。その背中を受け継ぎ、選手権3回戦の小諸商戦では1点ビハインドから終盤に逆転勝利をつかんだ。「あきらめなければ逆転できる」と成功体験を積んだのも大きな糧。厳しい冬にますます忍耐を磨き、次の春へ意志を繋ぐ。
廣瀬蒼キャプテン インタビュー
——選手権での率直な思いを聞かせてください。
廣瀬:夏休みからビルドアップで繋いでいく練習をしていたのと、「粘り強い守備をしよう」と言って試合に臨みました。 4回戦の松本国際さんはとても強くて、 自分たちのやろうとしていたことが何もできなかったので、すごく悔しかったです。
——「粘り強さ」が伊那北の強みであるとうかがいました。どんな気持ちで戦い抜きましたか?
廣瀬:とにかく皆で声を出して、つらいときでも全員でがんばろう、というのは意識していました。結果的には10-0で負けてしまったんですけど、「何としても1点は取って、反撃の雰囲気を出そう」と。自分は声が通りづらいんですが、それでも声を出して仲間を励ますように心がけていたし、 そのぶん背中で見せようと思っていました。
——選手権での学びや、課題はなんですか?
廣瀬:決定力や、守備の最後の粘り強さはまだまだ課題ですが、小諸商さんとの3回戦では「あきらめなければ逆転できる」ということも体験しました。あとは、強豪私立などレベルの高い学校になってくると、フィジカルも判断力も全然違うな、と感じました。
——伊那北の強みはなんですか?
廣瀬:皆が走れて、自分のやるべきことをできる、ということです。全員で声を出しながら盛り上げることもできますが、それぞれのポジションでの役割を皆が分かっていて、個々にがんばることもできます。
——先輩たちから受け継ぎたいものは?
廣瀬:今年の南信総体の準決勝では、粘って粘って、最後に得点して勝ちました。その粘り強さをこれからも受け継ぎたいと思います。
——来年に向けての意気込みをお願いします。
廣瀬:まずは南信総体優勝を目指します。県総体では先輩たちの成績を超えるベスト4が目標です。
星野樹副部長 インタビュー
——選手権後の率直な感想をお願いします。
星野:4回戦では自分たちがやりたいサッカーがまったくできなかったんです。そこで自分たちのレベルをあらためて知ることになって、課題もいろいろ見つかりました。得るものも多くて、良い試合だったと思っています。
——「粘り強さ」が伊那北の強みであるとうかがいました。どんな気持ちで戦い抜きましたか?
星野:「まずは1点」というのを心がけていました。でも、自分自身でも身体が後ろに傾いているのを感じたり、チームメイトからも「ラインが下がっている、プレーが後ろ向きになっている」という言葉があったり、その部分は改善していかなければいけないなと思いました。
——選手権で学んだことは?
星野:松本国際戦では、フィジカルや寄せの速さなどが自分たちとはレベルの違うものでした。その経験から、もっと球際やプレスのところをチーム全体として意識していく、と皆で共有しました。小諸商戦では、最初に先制されてから点を取り返せない時間が長く続きましたが、「諦めずに追いつこうとする意識」をしっかり表現できたことは成果だと思っています。
——伊那北の強みはなんですか?
星野:先生もおっしゃるように「粘り強い守備」は自分たちのコンセプトとして持っているので、しっかり持ち味として発揮できるようにしていきたいです。まだまだ発展途上なので、これからますます高めていきたいです。
——新チームの特徴や強み、課題などは?
星野:学年に関係なく、一年生からも積極的に意見が出るようになっています。「全員が意見を言い合う」という場は絶対に作って行きたいですね。プレー面では、セットプレーや、点差が開いてからの自分たちのメンタリティも課題だと思っています。マイナスな姿勢ではなく、ちゃんと前向きなプレーをしていくことをしっかり意識してがんばっていきたいですし、相手にリスペクトを払いつつも勝ちに行くこと。「前向きなサッカー」をコンセプトとしてしっかり持っていきたいです。
——来年に向けての意気込みをお願いします。
星野:今年は南信総体の決勝で負けてしまって、すごく悔しい思いをしました。来年はそこを優勝して、県総体ではベスト8の壁を乗り越えたいです。後輩との付き合い方やコミュニケーションの取り方なども先輩たちから学んだので、自分も後輩たちに何か残していきたいと思っています。
取材・撮影/佐藤春香